憲法の「はじめの一歩」

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『日本国憲法 大阪おばちゃん語訳』(谷口真由美(著)、文藝春秋(刊))を読みました。

まず何よりも「憲法を知る」という「知憲」からスタートしましょうというこの本、徹底的にわかりやすく憲法を解説しています。

何かと憲法が話題になる今日このごろ。でもどれだけの人が、憲法にはどんなことが書いてあるのかということはもちろん、そもそも憲法って何?ということ、知っているでしょう。

この本に書いてある程度のことは、学校で、せめて高校の社会科でしっかり学ばせてほしいと常々思っています。

学校では、憲法といえば「いちばん強い法律」で、「平和主義」と「基本的人権の尊重」と「国民主権」の3原理を丸暗記させられて終わり。その中身についてきちんと説明されることもない(多くの教師が正しい理解も知識も持っていないように思う)。

かくいう私も、司法試験の勉強を真面目にするようになるまで、憲法のなんたるかなんてぜ~んぜんわかっていませんでした(苦笑)

だからこそ、「知憲」。いっとき「論憲」ということがいわれたけど、その前に「知」らなきゃハナシになりません。

最近、「知憲」というコンセプトの本がけっこう出ていて、実は私も密かに計画しているところなのですが、この本は私が知る限り「はじめの一歩」としていちばんお勧めな一冊です。

特に、4章の「憲法って、誰のモンなん?」は秀逸です。ここはまるごと高校の教科書に転載してほしいくらい。

 

ただ、徹底的にわかりやすい「はじめの一歩」の本の宿命として、どうしても、言葉が足りないことで却って分かりにくかったり、誤解しやすかったり、必要なことが伝わりきらないなあ、と感じることがあります。 この本も全体的にそういうところが避けがたくあるのですが、特に以下の3点に、注意して読んでいただきたいと思います。

1つめは、「人権」の総論的なところで、人権に「重い」とか「軽い」とかがある、という部分(70ページ)。

ここは、必要な言葉がちょっと足りないと思いました。

人権に「重い」「軽い」があるというと、たとえば「表現の自由」(精神的自由権)のほうが「職業選択の自由」(経済的自由権)よりも重要、あるいは価値が高い、みたいなイメージをもってしまいませんか。

ですが、人権の「重い」「軽い」はそういう意味ではありません。

ではどういうことかというと、まず前提として、どんな人権も、国は法律などによって、必要な制限を加えることができます。たとえば、「表現の自由」に対してなら、名誉毀損はいけないよとか、「職業選択の自由」に対してなら、管理売春はいけないよ、というように。

憲法とは、その制限について、ここまでの制限ならよろしい、これ以上はいけない、というように、その制限に厳重な縛りをかけるという役割をもつ法規です。

実際にそのチェックをするのは裁判所ですが、このチェックにおいて、「人権が重い」とか「軽い」が出てくるわけです。

つまり、最も「重い」とされる「表現の自由」については、もう重箱の隅をつつくような厳重なチェックが必要(現実の裁判所が実際にそういう厳重なチェックをしているかどうかはさておき)。

なぜなら、権力の側としてみたら、自分たちに都合の悪い言論は封じたいわけだから、「表現の自由」を抑圧できたら好都合。

でもひとたび「表現の自由」が抑圧されたら、人々の心は萎縮し、言いたいことを言うことをためらってしまう。権力が積極的に抑圧することなく、国民自身が植え付けられた恐怖感で「自粛」するようになってしまう。

再び「自由」を取り戻すのは、とてもたいへんです。

まさに、DVと同じ構造ですね(苦笑)

他方、「軽い」とされるほうは、それよりは緩めのチェックでもよろしい、ということです。

「軽い」とされる人権は、主として「経済的自由権」とよばれる、職業選択の自由とか営業活動の自由などですが、それに対する制限については、弱者も共存共栄できる健全な経済社会を維持するとか、社会保障費などの財源を確保するなどの必要もあるし、そのために国会や行政庁の裁量や判断も尊重しなければいけない、と考えられています。また、その裁量や判断が間違ったときにも、軌道修正は比較的容易です。

たとえば、大規模店舗法で、デパートなどは一定の休業日を設けなければならないとか、夕方の何時以降は営業してはいけないとか、ちょっと前まではありましたよね。デパートの営業活動の自由に対して、かなりきつい規制がかけられていたわけです。でもそれは、周辺の小規模店舗を守るための合理的な規制として、憲法上許されると考えられていました。それが最近は「規制緩和」の嵐で、今のように元日以外は休業せず、夜の9時10時までやってるのが普通になったわけですが。

ともあれ、「表現の自由」は「他よりも価値が高い」から大事にするのではなく、「他よりもデリケートで壊れやすい」から、大事に取り扱いましょう、というイメージでしょうか。

人権の「重い」「軽い」とは、こういう意味です。

とりあえず、今日はここまでにいたします。2つめ以降は、また後日。

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